東南アジア屈指の近代的都市国家であるシンガポールは、東南アジア圏の経済の中心地であるだけでなく、世界屈指の金融センターともなっている国です。不動産に対する需要も高く積極的に取引が行われているため、多くの投資家から注目を集めています。
当記事では、シンガポールという国の基本情報から、不動産投資を行うメリット・デメリット、おすすめのエリア、不動産を購入する方法まで解説しています。シンガポールでの不動産投資に興味がある方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
シンガポールの基本情報
シンガポールでの不動産投資に興味がある方は、まずはどのような国であるかを知っておくことが先決です。ここでは、シンガポールの地理的特徴、人口・人種・文化、産業、経済といった基本情報について解説します。
地理的特徴
シンガポールは、マレー半島最南端に位置する大小63の島から構成される島国です。国土面積は719.7㎢で、最も面積が大きいシンガポール島でも面積は東京23区とほぼ同じであるという非常に小さな国となります。天然資源には乏しく、農地も多く確保することはできません。
赤道直下に位置する熱帯モンスーン気候であるため高温多湿な気候ですが、季節による気温の変化が少なく比較的過ごしやすいのが特徴です。雨季にはスコールに見舞われることもありますが、地質学的に安定しており台風・地震・火山噴火などの天災がほぼ起こらず、自然災害リスクは世界トップクラスに低いと言われています。
人口・人種・文化
シンガポールはマレー系・華人系・インド系を中心にさまざまな人種が混在しており、総人口は2024年時点で約603万9,000人です。シンガポール在住者のうち約3割を外国人が占めており、永住者の約4分の1は国外で生まれているという多国籍・他民族国家となります。
このような事情から、各民族独自の文化・宗教が混在しており、国内各所に各民族のお店が集まったエリアが散在しているのが特徴です。公用語も英語・中国語・マレー語・タミール語の4種類が用いられています。
シンガポール独自の文化というものはあまり見られない特殊な国ですが、インフラ・治安の良さ・教育環境・医療水準は世界トップクラスといっても過言ではないほど優れており、非常に住みやすい街であるとして、現地人だけでなく外国人駐在員からも高く評価されています。
産業・経済
シンガポールは製造業・商業・サービス業・運輸業・通信業・金融業が主要産業となっており、資源に乏しい小国でありながら、積極的に外国資本を取り入れることで急成長した国です。その驚くほどの成長スピードから「奇跡の成長」と例えられることもあります。
現在では世界トップクラスと評価されるほどのビジネス環境が整えられており、世界各国の企業が拠点を設けるグローバル近代都市国家として位置しています。地域的特性から農林漁業は盛んではなく、食料の約90%を輸入に頼っています。
総GDPは4,667億ドル(2022年)です。一人あたりGDPは2023年で8万4,734ドルとなっており、日本の約2.5倍という高水準を記録しています。
シンガポールで不動産投資を行うメリット
シンガポールは世界中の不動産投資家から注目されていますが、その理由はさまざまなメリットがあるためです。以下に、主なメリットについて解説します。
魅力的な物件が豊富にある
シンガポールは世界有数の近代的都市国家であるため、あらゆる商品・サービスが洗練されているのが特徴です。都市を構成する不動産物件においても例外ではなく、お洒落で魅力的な物件が豊富にあり、世界中から高い人気と需要を集めています。
投資対象はコンドミニアムが中心となりますが、単身者向け・カップル向け・ファミリー向けなど、物件の種類も非常に豊富です。ホテルの一室を所有して貸し出すホテルコンド投資を行うことも可能となっています。
このような状況から、新築物件だけでなく築年数が古い物件が高値で取引されることも多くあるため、投資家としては値上がりによるキャピタルゲインを狙える環境にあるのが大きなメリットです。上記の理由から、不動産投資を行いながら自身も現地の物件へ移住して、優雅な生活を満喫することもできます。
富裕層からの需要が見込める
シンガポールは近代的都市国家であり東南アジア最大の経済拠点でもあるため、世界中から富裕層やビジネスパーソンが多数集まってくる傾向にあります。そのため、現地の住民からだけでなく、金銭的に余裕のある移住者からの高い需要が見込めるのも大きなメリットです。
賃貸需要が高いだけでなく、物件の購入重要も高いため、売却益によるキャピタルゲインも
積極的に狙っていくことができます。不動産に大して安定的に高い需要がキープされていることは、不動産投資家にとって非常に魅力的であると言えるでしょう。
タックスヘイブンである
シンガポールは、現代では希少な存在となったタックスヘイブン(租税回避地)です。日本でいう住民税・相続税・贈与税に関しては、制度自体が存在していません。
不動産投資においてはキャピタルゲイン税・インカムゲイン税がいずれも非課税となっており、不動産取引にかかる多額の税金を回避することが可能です。シンガポールは利回りの低さからキャピタルゲインが不動産投資の主流となっているため、キャピタルゲイン税が非課税であることは投資家にとって大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、日本の居住者のまま不動産を売却すると、日本での申告と納税の義務が発生するため注意が必要です。
カントリーリスクが低い
上述した通り、東南アジア屈指の先進的都市国家であるシンガポールは、政治的・経済的に安定しており、国家や金融期間の信用度も高く通貨も安定しています。法律が厳格であるため治安が良く、気候も穏やかで天災リスクも高くありません。東南アジアの新興国や後進国のように社会情勢・経済情勢によるイレギュラーに見舞われる可能性が少なく、カントリーリスクは非常に低い国となります。
不動産投資は多額の資金を必要とするため、トラブル発生時の損失も非常に大きなものとなります。海外不動産投資において安定的に不動産の取引や管理を行えることは、投資家にとって大きなメリットと言えるでしょう。
シンガポールで不動産投資を行うデメリット
シンガポールでの不動産投資には、デメリットとなる面も存在するため、事前に把握しておくことが重要です。以下に解説していますので、参考にして下さい。
非常に高額なコストがかかる
シンガポールの不動産は非常に高額で取引されており、資金面での参入障壁が非常に高いことがデメリットです。生活水準が高く市場規制も厳しい国であるため、物件の維持管理にも多額の費用が必要となります。
また、不動産には累進課税による不動産税がかかり、自身が居住していない場合は税率が非常に税率が高くなるため注意が必要です。不動産取得印紙税に加えて外国人は加算で10%の追加印紙税も必要となります。
シンガポールの不動産投資は資金面での負担が非常に大きいため、参入する際には慎重な精査と検討を行うことが重要です。
インカムゲインの利回りが低い
シンガポールの賃貸利回りは驚くほど低く、良くて住宅3%・オフィス3.5%程度が相場となっています。そのため、家賃収入でローンの支払いとインカムゲインを受け取るといった日本では一般的な不動産投資のスキームを適用できない点がデメリットです。利回りの低さに対して税率が高めであるため、収益が見込めないどころか赤字に転落する可能性もあります。
このような事情から、シンガポールの不動産投資はキャピタルゲインによる収益を狙うのが基本となっており、他の国とは全く異なる戦略が必要となる点に留意しておく必要があります。
永住権が無ければ不動産購入が制限される
シンガポールでは、外国人の不動産の所有には制限が設けられており、土地・土地付き住宅・HDB(公団住宅)を所有することが認められていません。コンドミニアムやアパートメントであれば、一棟買いでなければ購入可能となっており、商業物件であれば外国人であっても制限はありません。
投資先は自ずとコンドミニアム・アパートメント・商業物件に限定され、移住予定の場合でも永住権が無ければ不動産購入に制限がかかるため、不動産投資を行うのであれば注意が必要です。本格的に不動産投資を行うのであれば、コンドミニアムの購入か賃貸物件の借り入れを行い、永住権を取得する必要があります。
シンガポールでおすすめのエリア
シンガポールは複数のエリアに分かれており、それぞれ特徴が異なります。ここでは、おすすめエリアとその特徴について解説します。
CBD(セントラル・ビジネス・ディストリクト)エリア
CBDは近代都市国家シンガポールを象徴するエリアで、ビジネス・金融の中心地です。寺院・博物館・観光施設などが集まる文化的な中心地でもあります。中心部には大手企業等の高層ビル・高級ホテルが多数立ち並び、その光景は圧巻です。生活利便性や交通利便性の高さから投資物件も豊富に存在しており、単身者向け・カップル向け・ファミリー向けなど種類も豊富にあります。
物件価格と賃料はいずれも高額であるため資金面での参入障壁は高くなりますが、物件に対するニーズは非常に高く富裕層や金銭的にゆとりのあるビジネスパーソンを対象とした不動産投資が行えるため、収益性に優れているのが特徴です。
資金面に余裕があり参入障壁をクリアできるのであれば、不動産投資には非常におすすめのエリアとなります。
クイーンズタウン周辺エリア
シンガポール国立大学・インター校・日系教育関連施設などが多数立ち並ぶ学園都市です。シンガポール中心地へのアクセスも良く教育関連施設も集中しているため、ベッドタウンとして機能しているエリアとなっています。国内最大規模のショッピングセンターや新興住宅地もあるため、生活利便性にも優れています。
仕事と教育の両方のニーズを満たしたいファミリー層から人気を集めているエリアであるため、ファミリー向け物件や日本人向け物件を集中的に狙っていきたい方にはおすすめです。
オーチャード周辺エリア
シンガポールの銀座とも例えられる、東南アジア屈指の繁華街「オーチャード」とその周辺のエリアです。メインストリートにはショッピングモールが立ち並び、高級ブランドのブティック・百貨店・美容室・食料品店・日用品店・クリニックなどさまざまな店舗が立ち並んでいます。日本人スタッフが在籍する日系の店舗や日本人学校なども多く、日本人の生活利便性が高い環境であるのも特徴です。
周辺には日本人からも人気が高い住宅街や欧米人の富裕層が多く住む高級住宅街も位置しており、日本人・海外富裕層を対象としたコンドミニアムへの不動産投資がおすすめとなっています。
シンガポールで不動産を購入する流れ
シンガポールでの不動産購入は独自の商習慣が形成されているため、不動産投資を行うのであれば理解しておくことが重要です。下記に、シンガポールで不動産を購入する際の流れを解説していますので、ぜひ参考にして下さい。
購入の申し込み
日本の大手不動産会社の海外部門もしくはシンガポール現地の不動産会社から物件情報を集め、購入したい物件を探します。良い物件を見つけたら、不動産会社に購入の申し込みを行いましょう。
購入が決定したら、購入権利証にサインをして購入権を行使し、手付金を支払うのがシンガポールでの慣習となっています。手付金の相場は、新築物件なら購入価格の5%、中古物件なら購入価格の1%です。
購入の申し込みを行ったら、同時に住宅ローンの申し込みと審査も済ませておきましょう。
売買契約書を締結する
売買契約書は、売主とデベロッパーが買主からの購入権を承諾した後2週間以内に作成されるため、その間に弁護士の選定を行っておきましょう。売買契約書が発行されたら、3週間以内に弁護士の前でサインを行います。
その後、弁護士の案内により売買契約書へのサインから2週間以内に、内国歳入庁へ印紙税と追加印紙税を支払います。
続いて、購入権の行使から8週間以内に、売主とデベロッパーに対して購入価格の15%以上の費用を支払います。以上で物件購入の手続きは完了です。
残金を支払う
購入手続き完了後は、物件購入価格の15%を残して残額を売主・デベロッパーに支払います。
新築物件の場合は、工事の進捗状況に応じて複数回に分けて支払うのが一般的で、物件購入価格の15%を残して支払いは完了となります。シンガポールの住宅ローンは物件評価額もしくは購入価格の約8割程度が上限であるため、少なくとも2割程度は現金で支払わなければならない点に留意しておきましょう。
中古物件の場合は、売買契約締結後の2週間以内に全額支払う必要があります。
物件の引き渡しを行う
物件が完成したら、その後、シンガポール政府による入居許可が発行され、買主に鍵が引き渡されます。
シンガポール政府による政府の最終検査証明が発行されるので、数ヶ月~半年程度の検査期間を経て物件に欠陥や不備がないことが確認された後、残りの支払代金15%を弁護士に支払います。
弁護士が預かった残金は、購入物件に問題が無ければ、弁護士が預かった残金は1年~1年半後に売主・デベロッパーへと支払いが行われます。
地域的特性を理解して不動産投資を行おう!
世界中の企業・富裕層・ビジネスパーソンが集まる近代的都市国家です。資金面でのハードルが高く参入は容易ではありませんが、不動産に対する需要も高く積極的に取引が行われているため、多くのチャンスが眠っている国であると言えるでしょう。
シンガポールで不動産投資を行うのであれば、投資手法・利回り・法律・税金・商習慣・エリアといった地域的特性を理解して戦略を立てることが非常に重要です。
シンガポールでの海外不動産投資に興味がある方は、ぜひ当記事を足がかりに現地の情報を集めてみてはいかがでしょうか。