東南アジアは、海外不動産投資の投資先として高い人気を集めている地域です。その一国であるミャンマーは、2011年の民政移管以降、外国からの投資意欲が急上昇している国となります。
当記事では、ミャンマーという国の基本情報から、不動産の現地事情、不動産投資を行うメリット・デメリット、おすすめのエリアについて解説しています。ミャンマーでの不動産投資に興味を持っている方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
ミャンマーの基本情報
ミャンマーでの不動産投資に興味があるのであれば、まずはどのような国であるのかを把握しておく必要があります。ミャンマーの地理的特徴、人口・人種・文化、産業・経済について下記に解説していますので、参考にして下さい。
地理的特徴
ミャンマーは、北緯10度から28度の間に位置する東南アジアの国家です。国土面積は約 68万㎢で、日本の約1.8倍程度の面積となります。東・西・北を山に囲まれ南が海に開いた盆地状の地形となっており、タイ・ラオス・インドバングラデシュの4国と国境を接しているのが特徴です。
国土中央には広大なエヤワディ川が流れ、河川流域には農業に適した肥沃な平原が広がっており、同国の食糧生産・食料共有を支えています。
熱帯性モンスーン気候に属するため年間を通じて温暖な気候となっており、夏服に近い軽装で通年過ごせるのが特徴です。しかし一方では、地震・台風・洪水などの自然災害が比較的多く発生しているため、災害リスクには十分に注意しておく必要があります。
季節は酷暑期・雨季・乾期の3つに分かれていますが、乾期が比較的過ごしやすく、観光客にも人気の時期となっています。
人口・人種・文化
ミャンマーの人口は2022年時点で5,418万人で、総人口の約30%が都市部に居住しており、残りの約70%は農村部に居住しています。人口の約70%がビルマ族で、中国系やマレー系の民族も存在しており、民族の数は135種類にのぼる他民族・多文化国家です。
公用語はミャンマー語(ビルマ語)が用いられており、その他40以上の言語が存在します。人口の約90%が仏教を信仰しており、キリスト教やイスラム教、ヒンドゥー教、ミャンマー独自の宗教などが信仰されています。
このように多くの民族・文化が混在している国であり、ミャンマー人も温和で自己主張が少なめな国民性であるため、さまざまな文化に対する適応性や受容性が高い国であると言われています。
産業・経済
ミャンマーの主要産業は農業で、伝統的な農業を続けて来た人口が多くを占める農業国です。近年ではサービス業が急激に成長してきており、産業別GDPは、農林水産業が約2.6割・鉱工業が約3.4割・サービス業が約4割という、従来の主要産業を上回る水準となっています。農林水産業・鉱工業を上回る水準となっています。
民政移管後から民主化が進むにつれて安定して高い経済成長率を維持してきており、GDPも右肩上がりで推移してきましたが、2021年のクーデターを契機に社会情勢・経済情勢は急激に悪化。安定していた物価も急激に上昇しており、自給自足以下の生活を送る貧困層が急増するなど、国内が混乱している状況です。
クーデター後は回復の兆しを見せていますが、深刻な不況が長引いており、産業・経済については不安定な状態が続いています。
ミャンマーの住宅事情・不動産投資の状況
ミャンマーでの不動産投資を検討しているのであれば、現地の住宅事情や不動産投資の状況を把握しておく必要があります。下記に概要を解説していますので、ぜひ参考にして下さい。
住宅事情
ミャンマーの住宅は、主に下記の4種類があります。
・コンドミニアム
6階建てまたは19メートル以上のビルで、エレベーター・セキュリティー付きの物件。
基本的に家具家電付き。
・サービスアパートメント
コンドミニアムにサービス(部屋の掃除、ベッドメイク、トラブル対応、朝食等)が付いた上位版の物件。外国人駐在員からの人気も高い。
・ローカルアパート
ミャンマー人を対象とした物件。6階に達しておらずエレベーターがない物件はアパートに分類される。
・一戸建て
ミャンマーでは主流の物件ではなく数が非常に少ない。古い物件が多くトラブルも多い。
一般的には1年分の家賃を前払いで支払うのがミャンマーの慣習となっており、現地人を対象としたローカルアパートにおいても、少なくとも半年分は前払いする必要があります。
日本と異なり、物件オーナーの許可さえ取得すれば、内装の改装やアレンジ等も比較的自由に行うことが可能です。
不動産投資の状況
ミャンマーでは2011年の民政移管以降民主化の政策が始まり、不動産開発が活発化。徐々に海外からも多くの企業や投資家に注目され始めて不動産バブルが発生しました。現在では、ピーク時の40%程まで下落していますが、アジア最後のフロンティアとも例えられるなど、不動産熱は長期的に継続している状況です。
ミャンマーの不動産市場の特徴として、土地は国家のものであり、企業や個人の所有は認められていないという考えが根底にあります。実質的には、政府から土地を借りて使用する権利である「使用権」の売買が行われています。
2017年には、不動産市場を外国人投資家の資金投下により活性化する事を目的としたコンドミニアム法が公表され、外国人投資家に対する不動産取引の明確化や制限の緩和が行われました。コンドミニアムに限り外国人の不動産所有権を認められることとなり、2018年には制限の範囲内でコンドミニアムの所有が可能となります。
ミャンマーの不動産関連の法律は未だ整備去れていない部分はありますが、コンドミニアム法の公表以来徐々にクリアになりつつあるため、外国人投資家の参入障壁も徐々に取り払われつつあります。
上記はクーデター発生以前までの状況で、2021年のクーデター以降は海外企業や駐在員の徹底・物価高騰・家賃の高騰・経済停滞・不動産開発の中断などさまざまな問題が生じており、不動産市場は混沌とした状況となっています。
ミャンマーで不動産投資を行うメリット
現在は不動産投資を行うには厳しい状況下にあるミャンマーですが、メリットやチャンスもあるとして注目している投資家も多くいます。下記に解説していますので、参考にしてみて下さい。
不動産価格上昇の可能性がある
かつてのミャンマーは不動産投資に関する法律・制度が整備されておらず、現地特有の商習慣が根付いているため、外国人投資家が参入する余地はあまりありませんでした。しかし、2011年の民政移管以降は民主化が進み、徐々に不動産投資を取り巻く法律や精度もが変わりつつあります。
2018年の外国人投資家の資本を呼び込む目的のコンドミニアム法の公表以降は、外国人投資家も安心してコンドミニアムを所有できる状況となり、海外からの不動産投資の熱量も高まっています。
現在はクーデター直後で不安定な状況となっているため希望的観測となりますが、今後国内情勢が安定化するなど状況が変われば、外国人の不動産購入の制限緩和や、停滞している不動産価格上昇といった可能性もあると考えられます。
不動産価格上昇の兆候をいち早く掴み、リスクテイクしつつ投資を行えるのであれば、キャピタルゲイン主体の投資で大きな収益を得られる可能性もあるかもしれません。
都市・産業の発展に伴い世界中から注目を集めている
ミャンマーは、2011年の民政移管後の新政権誕生を契機に、都市化・産業化が急速に進んでいる国です。不動産開発も積極的に行われ、クーデターが起こる前までは「アジア最後のフロンティア」として世界中の経済団体・企業・政府関係者が集まってきており、非常に活気にあふれていました。
仮にこのような状況が続いていたのであれば、ミャンマーの不動産投資は今もなおチャンスに満ち溢れていたと言えるでしょう。
クーデター以降は都市・産業・経済いずれも急激な落ち込みが見られ、不動産開発や不動産取引も停滞気味です。現在も不安定な情勢が続いていますが、今後国内情勢が回復するのであれば、かつての不動産バブルのような時期が訪れるかもしれません。
インカムゲインが高い傾向にある
ミャンマーでは外国人向けの物件が不足しており、需要に対して供給が追いついていない状況です。日本人向けの賃貸物件も例外ではなく不足している傾向にあります。そのため、物件に対するニーズの高さから家賃相場が高騰しており、ヤンゴンエリアの家賃相場は、日本の都心部と同等の相場となっているほどです。
このような事情から、不動産投資においてもニーズの高い物件を確保できれば、高いインカムゲインを長期的に得ることができるため、安定的な収益を見込めます。
物件価格は比較的安価であるため、リサーチを重ねて掘り出し物の物件を確保できれば、大きなチャンスを掴める可能性があります。
ミャンマーで不動産投資を行うデメリット
ミャンマーでは、新興国ならではのデメリットが存在するため、不動産投資に参入するのであれば、必ず現地の事情を把握しておく必要があります。下記に解説していますので、参考にして下さい。
情報の取得が難しい
ミャンマーでは、現地の不動産を扱う日系企業が少なく、現地の不動産や法律がビルマ語で発信されているため、日本人を含む外国人は情報を取得するのが難しいのが実情です。クーデター以後は情報統制が行われているため、情報取得の難しさに拍車がかかっています。
また、ミャンマーでは不動産仲介業者を規制する法律の整備も進んでいないため、購入者保護が適用されず不当に高額な手数料を請求される事例が多発しているという問題もあります。
このような理由から、外国人が不動産取引のアセスメントやスムーズな取引を行うのは困難を極めており、個人で現地の仲介業者と交渉するのであれば相応の覚悟が必要となるでしょう。
カントリーリスクが高い
新興国であるミャンマーは、繰り返しになりますが不動産投資を取り巻く法律や制度が十分に整備されておらず、スムーズな取引が難しい事情があります。台風・地震・洪水などの自然災害も比較的多く発生しており、大規模な災害が発生すると物件や人命に被害を及ぼす恐れがあるため、不動産投資を行ううえで無視できないリスクとなります。
上記のカントリーリスクに加え、ミャンマーでは2021年にクーデターが発生しており、国内が混乱している事情もあります。海外企業や駐在員が撤退したり深刻な不況が長引いたりと経済にも多大な影響が出ており、不動産開発・不動産取引も停滞気味です。資産保全や契約履行が着実に行われない可能性も否定できないでしょう。
このように、東南アジア各国ひいては世界各国と比較してもミャンマーのカントリーリスクは高めであるため、不動産投資を行うのであれば必ず留意しておく必要があります。
さまざまな税金が発生する
ミャンマーで不動産投資を行うのであれば、不動産取得・不動産保有に関する税制を理解しておく必要があります。
不動産取得に関しては、キャピタルゲイン税・印紙税・賃貸契約書の印紙税があります。ヤンゴン・マンダレー、ネピドーエリアに位置する不動産については、追加の印紙税も発生するため注意が必要です。
不動産所有に関しては、一般税・照明税・管理税・水税などの項目から構成される固定資産税が発生します。また、2016年5月からは不動産賃貸者に対して納税義務が課せられているため、不動産投資を行う場合は留意しておかなければなりません。
このように、ミャンマーでの不動産投資は課税される項目が多く、税金面での負担が大きいことがデメリットです。また、日本と租税条約を結んでいない国であるため、二重課税される恐れがある点にも注意しておく必要があります。
ミャンマーの不動産投資でおすすめのエリア
ミャンマーでの不動産投資は、他の国と同じくエリアごとに特徴や特性が異なります。ここでは、ミャンマーでの不動産投資におすすめのエリアとその特徴や特性について解説します。
ダウンタウンエリア
タウンタウンエリアは、ヤンゴン市内の南部に位置するエリアで、市役所・証券取引所などの行政機関が集中しているエリアです、日系企業が建築したSakuraTower(サクラタワー)は外資系企業・日系企業が多数入居しており、ヤンゴン市内のビジネスの中心地となっています。このような特性を持ちつつも、ネーミングの通り街の雰囲気は非常に庶民的であるのが特徴です。
近年では複合商業施設・オフィス・外国人スーパーマーケットの開業により生活利便性が向上しており、北部のヨーシンジー通りには外国人に人気のコンドミニアムも多数建造されています。
ダウンタウンでは、古い建物と新しい建物が共存しており、外国人・現地人の両方を対象とできるため、ミャンマーの不動産投資では非常におすすめのエリアとなります。
ヤンキンエリア
ヤンキンエリアは、ミャンマー最大の都市であるヤンゴン市の中央に位置するエリアです。数多くの高級コンドミニアム・大型ショッピングモール・複合商業施設が立ち並び、人口密度も高くヤンゴン市内でも特に発展著しいエリアとなります。
現在は人口の多さから渋滞が発生しがちですが、生活利便性が高くオフィス・住宅ともに高いニーズを誇るのが特徴です。
今後も新たなサービスアパートメントやコンドミニアムの開発が期待されているため、キャピタルゲイン・インカムゲイン両方を狙える不動産投資には非常におすすめのエリアとなっています。
タンリンエリア
タンリンエリアは、ヤンゴン市内から川を隔てて南東に位置するエリアです。田園風景が広がる閑静なエリアですが、近年スタートした富裕層・ハイクラス層を対象としたニュータウンプロジェクト「スターシティ」が大きく注目されています。
スターシティ内には高級コンドミニアム・複合商業施設・ショッピングモール・オフィス・ゴルフ場などのさまざまな物件が立ち並び、周囲には水と緑に溢れた豊かな自然景観が広がります。
将来的な不動産価値向上が期待されているエリアであるため、富裕層・ハイクラス層を対象とした不動産投資を行いたい方や、値上がりを見越した先行投資を行いたい方にはおすすめです。
現地事情を理解したうえで不動産投資を行うのが賢明!
ミャンマーの不動産投資は、クーデター以前までは「アジア最後のフロンティア」と呼ばれるほど世界中から注目されていました。しかし現在では、やはりクーデターの影響が非常に大きく、国内情勢は不安定で不況が長引いているのが実情です。不動産市場も大きく影響を受けており、現在は不動産投資に参入するのは厳しい状況です。
チャンスが埋もれている状況やエリアも存在しますが、現状では国内情勢が安定化するまでは様子見にしておくのが無難でしょう。
投資機会が訪れた際に先行者利益を確保したい方は、今後の変化に備えて情報収集と情報分析を行っておくのがおすすめです。