フィリピン不動産投資に関わる税金一覧|取得・売却時など項目別に解説
- フィリピン不動産投資でかかる税金の一覧
- フィリピンで不動産を購入できる?購入する際の規制
- フィリピン不動産投資で発生する税金と諸経費
- ①取得時にかかる税金・諸経費
- ②保有中にかかる税金・諸経費
- ③賃貸運用時にかかる税金・諸経費
- ④売却時にかかる税金(キャピタルゲイン税)
- ④売却時にかかる諸経費(印紙税・仲介手数料)
- ⑤相続・贈与時にかかる税金
- フィリピン不動産の所得税と相続税は日本側でも課税される
- 日本の居住者は国外の所得も課税対象になる
- フィリピンで納めた税金は外国税額控除で調整する
- フィリピンの物件は日本の相続税の対象になる
- フィリピンで実際に物件を購入した場合の税金シミュレーション
- フィリピン不動産投資の税金を把握して収支計画を作成しよう
フィリピンの不動産に投資する際には物件価格のほか、取得・保有・売却のそれぞれの場面で税金と諸経費がかかります。
税率を把握しないまま収支を計算すると、手元に残る金額が想定を大きく下回ってしまうのです。
そこでこの記事ではフィリピン不動産投資の税金を場面ごとに整理し、税率と課税のベースになる金額を公的資料をもとに解説します。
日本側で必要になる申告や実際の物件を使った税額の試算も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
フィリピン不動産投資でかかる税金の一覧

はじめにフィリピン不動産投資で発生する主な税金を、場面ごとに一覧で確認しましょう。
| 場面 | 税金 | 課税対象になる金額 | 税率 |
| 取得時 | 付加価値税(VAT) | 販売価格 | 12% |
| 取得時 | 印紙税 | 契約金額 | 1.5% |
| 取得時 | 不動産移転税 | 売買価格または市場価格の高い方 | 0.5〜0.75% |
| 取得時 | 登録料 | 購入価格 | 約0.25% |
| 保有中 | 固定資産税 | 自治体が定める評価額 | 1〜2%以下 |
| 保有中 | 特別教育基金 | 自治体が定める評価額 | 1% |
| 賃貸運用時 | 所得税(非居住外国人) | 家賃収入の総額 | 25% |
| 売却時 | キャピタルゲイン税 | 売買価格または市場価格の高い方 | 6% |
| 売却時 | 印紙税 | 契約金額 | 1.5% |
| 相続時 | 遺産税 | 控除後の遺産額 | 6% |
| 贈与時 | 贈与税 | 年間25万ペソを超える贈与額 | 6% |
これらの税金のうち特に注意したいのが、税金のベースになる金額が日本の不動産投資と大きく異なる点です。
具体的には不動産移転税とキャピタルゲイン税の2つは、取引価格または市場価格のいずれか高い方に課されます。売却益ではなく取引の総額に税率をかけるため、税額は日本の場合よりも大きくなる傾向にあります。
フィリピンで不動産を購入できる?購入する際の規制

フィリピンでは外国企業や外国人による土地の所有が認められていません。
フィリピン共和国憲法によって、土地を所有できる主体が制限されているからです。
認められているのはフィリピン国籍を持つ個人と、フィリピン国籍の個人またはフィリピン法人が資本の60%以上を所有する法人だけです。
そのため日本人が購入できる物件は、戸建て・一軒家ではなくコンドミニアムが中心です。1棟をまるごと所有することもできず、外国人と外国法人による保有割合は全ユニット数の40%までという制限も存在します。
フィリピン不動産投資で発生する税金と諸経費

ここからは日本に住む個人がコンドミニアムを1戸購入するケースを前提に、取得時・保有中・賃貸運用時・売却時・相続時にかかる税金・諸経費についてそれぞれ解説します。
①取得時にかかる税金・諸経費
フィリピンで物件を購入する際には「付加価値税」「印紙税」「不動産移転税」に加えて、登記に関わる諸費用も必要になります。
日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)は、標準税率が12%です。
デベロッパーのように不動産の販売を事業として行う売主から購入する場合、物件価格はVATの課税対象になります。ただし販売価格が360万ペソ(約900万円)以下の住宅は非課税となる優遇措置があります。
なおデベロッパーが提示する物件価格はVATを含んだ総額であるのが一般的です。資料にある物件価格に後になってから12%の税金が上乗せされることはないのでご安心ください。
マニラ首都圏のコンドミニアムは360万ペソを超える価格帯が中心のため、多くの物件がVATの対象になると考えておきましょう。
印紙税は不動産の譲渡に対して、契約金額1,000ペソあたり15ペソ、つまり1.5%が課されます。
1,000ペソ未満の端数も課税の対象です。売買契約書や譲渡証書のように権利義務の移転を証明する書面が対象で、契約当事者のどちらかが申告・納税を行います。
不動産移転税は売買価格または市場取引価格のいずれか高い方に課される地方税です。
税率の上限は地方政府法(共和国法7160号)で定められており、マニラ首都圏は0.75%まで、それ以外の地域では0.5%までとなっています。
なお翻訳によっては同じ税金が「地方譲与税」「不動産取引税」などと表記される場合もありますが、いずれも同じ税金のことを指しています。
登記に関わる費用も別途発生します。買主の名義で新しい権利証を登録・発行するには、購入価格の約0.25%の登録料が必要です。
加えて売買契約書を公証人に認証してもらう費用も発生します。
公証を受けた書面でなければ所有権移転登記に進めないため必須の費用ですが、公的に料金が定められているわけではないため具体的な金額は見積もり時に確認しましょう。
②保有中にかかる税金・諸経費
フィリピンで不動産物件を持っている間は、毎年の「固定資産税」と「特別教育基金」、物件の管理費が発生します。
固定資産税の税率は評価額に対して、マニラ首都圏の市と町が2%以下、それ以外の州が1%以下です。さらに「特別教育基金」として、評価額の1%が毎年上乗せされます。
ただし課税のベースは購入価格ではありません。自治体が定める市場価値に、資産の種類ごとの倍率をかけた評価額が基準になります。
倍率は自治体の条例で決まり、地方政府法では住宅用の土地が20%以下、住宅用の建物は市場価値に応じて0〜60%の範囲と上限が定められています。
税金のほかにもコンドミニアムの管理費と火災などに備える保険料を毎年負担します。
コンドミニアム法(共和国法4726号)は管理規約で共用部分の維持管理や保険、各住戸の持分に応じた費用負担について定められるとしています。ただし金額や料率の決まりはなく物件ごとに異なるため、購入前に対象物件の管理費を確認しておきましょう。
③賃貸運用時にかかる税金・諸経費
日本に住みながら物件を貸す方はフィリピンの税法上「非居住外国人」にあたります。暦年の滞在日数が180日以下であれば、フィリピン国内で生じた総所得に一律25%の税率で「所得税」が課税されます。
ただし25%の課税対象は経費を差し引いた利益ではなく総所得です。管理費や修繕費を引く前の家賃収入が、そのまま課税のベースになる点に注意が必要です。
所得税のほかに不動産会社・管理会社への手数料支払いや日本への送金・為替手数料も、毎年の運用コストとして想定しておく必要があります。
④売却時にかかる税金(キャピタルゲイン税)
フィリピンでの不動産売却時には「キャピタルゲイン税」が発生します。
フィリピンで個人が不動産を売却すると、キャピタルゲイン税として6%が課されます。
なおフィリピンのキャピタルゲイン税は売却益ではなく、売却価格または市場価格のいずれか高い方の総額に対して課税される点にご注意ください。
たとえば以下の条件の物件を売却するとします。
- 購入価格:400万ペソ(約1,000万円)
- 市場価格:480万ペソ(約1,200万円)
売却価格ごとに発生する税金は次のように変動するイメージです。
- ケースA:売却価格が500万ペソ(約1,250万円)の場合:500万ペソ × 6% = 30万ペソ(約75万円)
- ケースB:売却価格が450万ペソ(約1,125万円)の場合:480万ペソ × 6% = 28万8,000ペソ(約72万円)
売却価格500万ペソのケースAでは市場価格480万ペソよりも売却価格の方が高いため500万ペソが課税のベースになります。
一方で売却価格450万ペソのケースBでは、市場価格480万ペソの方が高いため、450万ペソではなく480万ペソが課税のベースとなるのです。
なお申告・納税の期限は取引日から30日以内です。不動産売買を事業として繰り返す場合は6%のキャピタルゲイン税ではなく、通常の所得税の対象になります。
④売却時にかかる諸経費(印紙税・仲介手数料)
印紙税は購入時だけでなく売却時にも納めます。税率は譲渡価額の1.5%です。売主と買主のどちらが負担するかは契約で決まるため、売買の条件を詰める段階で確認しておきましょう。
売却を仲介会社に依頼する場合は仲介手数料を支払います。
不動産サービス業法(共和国法9646号)では不動産仲介人が「専門報酬、手数料その他の対価を得て、不動産取引において当事者の代理人として行為する者」と定義されています。
ただし料率の規定はないため、金額は契約内容で決まります。同法により仲介の実務は登録・免許を受けた者に限られるため、依頼先が免許を持っているかも合わせて確認すると安心です。
なおフィリピンの不動産投資では納税と登記の順番にも気をつけなければなりません。
売買契約(Deed of Absolute Sale)を締結したら、まず税務署から納税の完了を証明する書類を取得します。この書類は「Certificate Authorizing Registration(CAR)」または「Tax Clearance Certificate(TCC)」と呼ばれ、取得してはじめて所有権移転登記に進むことができます。
つまり納税が済まないと買主へ名義を移せないため、売却の予定を立てるときは書類の取得にかかる期間も見込んでおきましょう。
⑤相続・贈与時にかかる税金
フィリピンには相続税(Inheritance Tax)という税目がなく、亡くなった方の資産に対して「遺産税」が課されます。税率は2018年施行の税制改革法(TRAIN)により一律6%です。
基礎控除などを差し引いた金額をもとに計算し、申告書の提出期限は被相続人の死亡から1年以内となっています。
贈与税も同じく一律6%です。暦年で贈与した金額のうち25万ペソ(約62万5,000円)を超える部分が対象で、申告・納税の期限は取引日から30日以内です。
なお不動産を家族などに贈与する場合であっても、前述した1.5%の印紙税が発生することに注意が必要です。
フィリピン不動産の所得税と相続税は日本側でも課税される

日本に住みながらフィリピンの不動産に投資する場合は、フィリピンで納める税金とは別に日本での申告も必要です。ここでは日本で納める所得税・相続税をそれぞれ解説します。
日本の居住者は国外の所得も課税対象になる
日本国内に住所がある方などは日本の所得税法上の居住者にあたり、所得が生じた場所が日本国内か国外を問わず、そのすべての所得に対して課税されます。
フィリピンの物件から得た家賃収入や売却益も日本で申告しなければなりません。
その際家賃収入は「不動産所得」として他の所得と合算して課税されます。一方で売却益は「譲渡所得」の区分で確定申告します。
譲渡所得の税率は所有期間で変わります。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得として20.315%、5年以下なら短期譲渡所得として39.63%の税率が適用されます。
売却のタイミングが少し違うだけで税率がほぼ倍になる場合もあるため、売却時期は所有期間を確認してから決めましょう。
フィリピンは取引の総額への課税、日本は利益への課税と、それぞれの税金の仕組みは異なります。判断に迷う場合は、海外不動産投資に詳しい税理士へ相談しておくと安心です。
フィリピンで納めた税金は外国税額控除で調整する
同じ所得に日本とフィリピンの両方で課税される二重課税は「外国税額控除」で調整します。
たとえばフィリピンで50万円のキャピタルゲイン税を納め、日本の譲渡所得にかかる税額が100万円だった場合、日本で納めるのは50万円を差し引いた残りの50万円です。
ただし控除できる金額には「その年の所得税額 ×(調整国外所得金額 ÷ 所得総額)」という上限があります。
上限を超えると超えた分は控除しきれずに自己負担となりますが、一定の要件をクリアすることで翌年以後3年間に控除を繰り越すことができます。
外国税額控除の適用を受けるには、確定申告書に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」と外国所得税を納めたことを証明する書類を添付します。
フィリピンで納税した際の書類は日本の申告で使うため大切に保管しておきましょう。
フィリピンの物件は日本の相続税の対象になる
フィリピンで投資した物件は、家族が相続する時に日本の「相続税」の対象になります。
日本国内に住所がある相続人は、国内の財産だけでなく国外の財産もすべて課税対象になるためです。
なお日本に住所がない相続人は原則として日本国内の財産だけが課税対象です。ただし日本国籍があり、被相続人の死亡日前10年以内に日本国内に住所を有したことがある場合は、国外財産も課税の対象になります。
フィリピンで納めた遺産税は、日本の相続税では外国税額控除の対象です。
フィリピンに限らず国外の財産に日本の相続税にあたる税が課された場合、その金額を日本で計算した相続税額から差し引くことができるので覚えておきましょう。
フィリピンで実際に物件を購入した場合の税金シミュレーション

実際の物件を例に取得時の税額を試算してみましょう。ここではマカティ市のチノ・ロセス通り沿いで建設中のプレビルド物件「ジェイド・レジデンス(Jade Residences)」を取り上げます。
| エリア | マカティ市/チノ・ロセス通り |
| 物件名 | ジェイド・レジデンス(Jade Residences) |
| 価格 | ¥16,024,927〜 |
| 専有面積 | 24.02〜27.32㎡(スタジオ〜2ベッドルーム) |
| 竣工予定 | 2029年3月 |
| 総階数 | 地上34階建て(総戸数1,998戸) |
物件価格は為替レートによって変わるため、ここでは便宜上1,600万円を取得価格としてシミュレーションを実施します。
| 印紙税(1.5%) | 24万円 |
| 不動産移転税(0.75%) | 12万円 |
| 登録料(0.25%) | 4万円 |
| 合計 | 40万円 |
この場合の合計税額は40万円で、物件価格の2.5%にあたる金額です。
ここに売買契約書作成のための公証人費用が上乗せされます。なおデベロッパーが提示する物件価格は付加価値税(VAT)を含んだ総額で示されるのが一般的なため、試算には含めていません。
フィリピン不動産投資の税金を把握して収支計画を作成しよう
フィリピン不動産投資では、取得時に付加価値税12%・印紙税1.5%・不動産移転税0.5〜0.75%・登録料約0.25%を納めます。保有中は固定資産税が評価額の1〜2%以下と特別教育基金1%、賃貸中の家賃収入には25%、売却時のキャピタルゲイン税は6%、相続時の遺産税は6%です。
日本に住んでいる方ならフィリピンでの家賃収入も売却益も日本で申告が必要で、物件は日本の相続税の対象にもなります。フィリピンで納めた税金は外国税額控除で調整できるものの控除には上限があるため、納めた全額が差し引けるとは限りません。
また公証人費用や管理費のように、見積もり時に確認が必要となる費用もあります。物件を検討する段階で対象物件の取得費用を確認し、税金と諸経費まで含めた収支計画を作成しましょう。